2019年04月05日

久しぶりの東京 その2

東京行きのもうひとつの目的として「岡上淑子 沈黙の奇蹟」展がありました。

東京都庭園美術館はこれで確か三度目ぐらいでしょうか。
いつ行っても素敵なところです。

旧朝香宮邸ということで、『内部の改造は僅少で、アール・デコ様式を正確に留め、昭和初期の東京における文化受容の様相をうかがうことができる貴重な歴史的建造物として、国の重要文化財に指定されています。』とあります。

館内はいたるところにアール・デコ様式が施され、形状の美しいシャンデリアや回廊など、見てまわっているだけで優雅な気持ちになります。
そんな美術館に飾られた岡上淑子(おかのうえ としこ)さんのモノクロームのコラージュ作品が栄えない訳がない! 作品と場所との相性が素晴らしく一致した展覧会でした。この場所を企画した方の勝利ですよ、これは。

いろいろ資料を見ると、岡上淑子さんもまた、コーネル同様マックス・エルンストにかなりの影響を受けていることが分かります。瀧口修造に見出された彼女は、エルンストの作品を見せられ、文字通り“魅せられた”のでしょうね。

現代においては人間の体に動物の頭をすげ替えたようなコラージュは珍しくないけれど、戦後間もなくの日本でそれを実行した岡上さんは、やはり日本国内においてコラージュの第一人者といえるんでしょうね。その才能をいち早く掘り起こした瀧口修造の目利きも凄いといえます。瀧口から絶賛された彼女はその後一定の時期に集中して素晴らしい作品の数々を残しています。

実際コラージュに使われた雑誌のページも展示されていました。元の写真を見ると、最初に目にした時の岡上さんのひらめきが手に取るように分かる気がします。たとえば、二人のウェディングドレスをまとった幸せそうな女性がカーテンの向こうに見える窓外の景色を、ガイコツが整然と並んだ奇異なものにしたらどんなにか面白いことでしょう!って感じでしょうか。

たくさんの作品を一堂に見ることで、岡上淑子さんの創作の泉のようなものに触れられた気がします。作り進めていくうちに最初は影響を受けたであろうエルンストから離れて、徐々に自分ならではの世界を表せるようになっていったのでは…。作品には気品があって女性ならではの視点が窺えます。

ただ、とても惜しいのが結婚と同時に公のアートの世界から姿を消されたこと。その後新たにコラージュ作品を創作されなかったことです。
結婚後に描いた絵画や写真なども展示されていて上手ではあるけれど、それらはやはりコラージュほどの輝きは放っていないように見えました。

かなり前に大阪のThe Third Gallery Ayaで初めて作品を見て、ご本人ともお会いできたことは今となってはとても貴重な機会でした。後に大きな展覧会が国内外でこんなに数々展開されるとは!? ギャラリーの方も凄いアーティストが埋もれている!と思って企画したんでしょうね。

何を話したのか記憶にないんだけど、もの静かでとても品のある女性だったことは覚えています。今もご存命ではあるけれど、これから先、新作が発表されることは多分もうないでしょう。戦後短い期間に彗星のように一時代を築かれた後、ひっそりとされていたのに近年この騒ぎ方はいったい何なんだろうという気もします。海外からじわじわと広まってきたんでしょうか。そもそもコラージュ自体、20年前の日本では「コサージュ?」と言われたぐらい認知度が低かったのに徐々に広く知られるようになってきました。まぁそれだから私もコラージュ作家です、なんて以前に比べ平気で名乗れるようになったんですけどね。

今回、たくさんの方が展覧会に来られているのを見て、このコラージュというシュルレアリスム的なアートの手法について、いったいどのように捉えているんだろう?と思いました。コラージュという手法が多くの人に知ってもらえる大きな機会を、日本人の作家として岡上淑子さんが作ってくださった功績は希有なことなんでしょうね、きっと。私はその足元にも及びませんが、一人のコラージュ作家として感謝しないとなぁと心から思います。

展示の最後に岡上さんの強いメッセージ性のある一文が記されています。
私はこのひとつひとつの言葉に胸をつかれました。これからも何度も反芻して心に留めておきたい一文になりました。

「コラージュ−他人の作品の拝借 鋏と少しばかりの糊
 
 芸術…芸術と申せば何と軽やかで何と厚かましい純粋さでしょう

 ただ私はコラージュが其の冷静な解放の影に、
 
 幾分の嘲笑をこめた歌としてではなく、

 この偶然の拘束のうえに、意志の象を拓くことを願うのです」



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posted by lusikka at 22:12| 大阪 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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